『エドウィン・マルハウス』礼賛の弁

個人的な思い入れを書いておくと、『エドウィン・マルハウス』は僕が小説に求める愉しみのすべてが詰まった本です。海外文学なんて普段は興味ないという人も、ぜひ試しに読んでみてくれると嬉しい。

高橋源一郎はかつて、別の本の書評で次のように書いていた。(J・G・バラード『コカイン・ナイト』評「世界が終わった後に」)

「素晴らしい小説」とは、その小説を読むことがまったく新しい経験であると感じさせてくれるような、そして、それを読み終わった後、自分はすっかり変化してしまったと感じさせてくれるような本のことをいいます。

たしかに素晴らしい小説を読むと、読んだ後に自分の「世界の見方が変わった」ように感じられる。

もうひとつ付け加えるなら、素晴らしい小説というのは、どうして小説を読むことは愉しいのか、その原点を再認識させてくれるものでもあるだろう。

エドウィン・マルハウス』は、まさにそのどちらにも当てはまる小説だ。