『文學界』2004年7月号

たまたま図書館に行ったら貸出可能になっていたので、時期外れだけどいくつか記事を拾い読みした。

阿部和重インタビュー「世界解釈としての映画批評」:

映画批評集の『映画覚書 vol.1』 ISBN:416365920Xのでその話。いまなら言えるけどメル・ギブソンこそがイーストウッドの後継者ではないか、という話が出ていて面白い。疑似ドキュメンタリー手法の是非と『ダンサー・イン・ザ・ダーク』など、他の話題も結構興味深かった。

村上春樹はたしか、他の作家の小説を翻訳することが自分の創作をするうえで欠かせない刺激になるので、これからも創作の合間に翻訳をやり続けるだろう、というようなことを語っていた。阿部和重にとって映画を鑑賞すること、分析をすることは、その村上春樹にとっての翻訳と似た位置付けにあたるのかもしれない。

阿部和重「映画覚書」:

連載中の映画コラム。同時期のせいか上のインタビューと内容が重なっている。ティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』について書いたくだりで、自分はある映画を見るとき「映画とは何か」という問題を重ね合わせて考える傾向がある、というようなことを書いているのは、僕自身もそういうことがあるので共感できる。

今回主に取り上げられているhttp://www.bitters.co.jp/otar/gunto.htmlオタール・イオセリアーニ監督)、それと『映画覚書 vol.1』には興味が湧いてきた。何か騙されているような気もするけれど。

書評欄では日比野啓氏による『ミドルセックス』評が出ていて、良く出来ているけど欲を言うとエンタテインメントとして手練れすぎるのではないか、みたいな歯切れの悪い褒め方だった。