ジーン・ウルフ『ケルベロス第五の首』

bibid:02461568 The Fifth Head of Cerberus (1972) / 柳下毅一郎訳 / 国書刊行会 ISBN:4336045666

面白く読めたし、凄い作品なのだろうと思うけれど、この手の文学的に書かれたSF小説を読むとどうも、これを遠い異星というSF的な舞台設定でやる必要はあったんだろうかと思ってしまう。レムの『ソラリス』やル=グィンの『闇の左手』を読んだときも似たようなことを感じた。(そういう有名作しか読んでいない程度なので偉そうなことは言えないのだけれど)

SFの道具立て自体にあまり愛着がないと、それを文学的に高めようとする試みに共感しにくいということかもしれないし、単に星間旅行の可能性を描くことが今はガジェット以上の意味を失ってしまったということなのかもしれない。

第2部の「ある物語」は正直なところとっつきにくくて結構読み流してしまったので、もっと深く読み込める余地が色々とありそうだ。それでも第3部は謎解き的な読み方で楽しめる。(一応、殊能将之氏のネタばれ解説を覗いてみたら、似たような結論に達していた)

連想した作品は先に挙げた『ソラリス』と『闇の左手』(文化人類学系SFということで)、あと書法はスタージョンの『きみの血を』が少し似たことをやっていた気がする。

参考リンク(ネタばれ注意):